2016年1月20日水曜日

2016年1月19日


冬の古都・南京


東洋美術史の竹浪です。年末に南京へ行ってきました。
三国志で有名な呉とそれに続く東晋、南朝の四王朝が都を置いた古都。
K大学のI先生の調査団に参加しての4泊5日の旅です。

1日目 夜の便で関空から南京へ。調査団は数日前に出発し、私は途中参加なので一人で移動です。たまたま飛行機で隣り合わせた方が、南京出身の方で、空港から市内へのバスを教えてくださったので、スムーズにホテルまで行くことができました。



2日目 天気は快晴、気温は京都より少し低いくらい。
朝から早速、南京博物院へ向かいます。
南京博物院は3年前にリニューアルされ、石器時代から近代まで膨大な収蔵品が展示されています。特に南朝の陶磁器、貴族の墓から発見された塼(レンガ)製の壁画は必見です。広い館内を汗だくになって夢中で撮影しました。



続いて、南京の北東にある名山・紫金山ふもとの霊谷寺へ。
9階建ての塔に昇ると市街地が一望できました。冬枯れの木立は、清代の金陵(南京)派の静寂な山水画を思わせます。


午後からはさらに北東へ。南朝・梁時代の皇族の墓に建てられていた石柱や石獣が田野に点在しています。かつての栄華と世の無常を感じずにはいられません。


ここは江南の名刹・栖霞寺です。南朝~唐時代の石窟が山腹に幾つも刻まれています。五代(10世紀)に、この地で栄えた南唐の石塔も立っており、仏伝図のレリーフがみごとです。

3日目 I先生一行は一足先に帰国され、今日からはKo大のM先生との二人旅です。
午前中は、きのうに続き南京博物院へ。見切れなかった展示の続きです。
午後からは、1年半前に開館したばかりの六朝博物館へ。MIHO MUSEUMと同じく中国系アメリカ人の建築家I.M.ペイが手掛けたとのことで、写真掲載は控えますが、とても凝った展示室でした。例えば室内が竹林になっていて、その間を巡りながら作品を鑑賞する部屋もあります。ここでも、青磁などの出土品が惜し気もなく飾られています。付近は、中華民国時代の建築物も多く、プラタナスの街路樹も立派で、古都らしい雰囲気を味わえます。

4日目 地元ガイドのOさんの案内で、郊外の史跡巡りです。まずは南唐の陵墓に出かけたのですが、びっくりするほど濃い霧であたりの様子が全くわかりません。ホワイト・アウト状態のなか何とかたどりついたころ、ようやく陽が射してきました。
 南唐は10世紀半ばに栄えた王国で、初代と二代目の王様の墓が街の西北の山中で発見され、南唐二陵として公開されています。これは二代目・李璟の順陵。私の研究テーマでもある山水画家・董源が仕えた王様です!当時の繁栄をしのびつつ、内部の彩色やレリーフに注意して調査しました。


 昼過ぎからは、長江東岸のビュースポット・閲江楼へ。明の初代・洪武帝が建造しようとしたものの取り止めとなり、現代になってからの建築ですが、南京を巡る城壁と長江沿岸の大パノラマを見渡せます。

 さらに共産党の国家建設のシンボルである長江大橋へ。1968年の完成で、長さは約1.5キロ。下は鉄道、上は車道と歩道になっています。橋の上から眺めた長江です。列をなして、整然と輸送船が過ぎていきます。午後の陽を受けた水面のかがやきと、かすむ船影とのコントラストは、まるで一幅の水墨画です。

 夕刻、ホテルへつきました。市内にある玄武湖公園のほとりです。黄昏の眺めが見たくて、湖畔を散策。ちょうど月も登りはじめたころです。岸辺の蘆。繋留された小舟。次第にうす紫になっていく対岸、遠くまで続く水面。董源もこのような長江や水郷の風景を眺めることで、江南山水画を創り出していったのかもしれません。

 このあと、M先生と市内の繁華街・秦淮へ。夫子廟、科挙の受験場跡は遅くまで開いていて、南京最後の夜を満喫しました。

5日目 午前中、夫子廟近くの名園・瞻園へ。四角い敷地を巧妙に使っており、次々に変化する眺めに驚かされます。

日暮れの便で関空へ。陵墓、寺院、庭園、博物館、近代建築や江南の自然にも触れることのできた5日間でした。行けなかった場所もまだ沢山あるので、ぜひ次の機会にと思います。I先生、M先生をはじめお世話になった皆さま、本当にありがとうございました。