2016年1月15日金曜日

2016年1月13日

冬休み読書感想文

 あけましておめでとうございます。本年も芸研に関係あること無いこと更新していきたいと思います。よろしくお願いいたします。



 冬休みに三田誠広さん著『聖徳太子-世間は虚仮にして-』を読みました。昨年の8月に出版された本なのですが、これが…とてもおもしろかったです。以下若干のネタバレを交えつつ紹介したいと思います。


 舞台は今から約1400年前の飛鳥時代の奈良。主人公は題名から分かる通り、日本史のスーパースター聖徳太子です。彼の生涯について史実とフィクションを交えながら物語が進みます。ちなみにここでいう史実とは『日本書紀』や『上宮聖徳法王帝説』などを指します。大昔に書かれたこれらの文章からは、もちろん聖徳太子の公の場においての姿しか読み取ることが出来ません。太子が日々何を考え、何に笑い何に涙したのか…そんなドラマがあったにも関わらず……見てみたい、聖徳太子の素顔を……!そんなアツい私の妄想に見事に応えてくれたのがこの本です。

 そして、この本にはなんと、あの鞍作止利が登場するのです。みなさまご存知ではあると思いますが一応紹介すると、鞍作止利とは飛鳥時代に活躍した仏師です。『日本書紀』にも登場する止利は、仏教が公伝したばかりの飛鳥時代において、権力者に請われて仏像をつくりました。彼がつくった像は1000年以上経った現在でも法隆寺などで見ることが出来ます。(《法隆寺金堂釈迦三尊像》《飛鳥寺釈迦如来坐像》など)このように美術史においては輝かしい功績を残す止利ですが、日本史の中で見ると聖徳太子やに比べ、残念ながら彼はやや地味なのです……。しかし、この本の登場人物一覧ページには「鞍作止利」の名前が!しかもチラッと出てきて退場する端役ではありません。冒頭からラストまでほぼ出突っ張りな準主役ポジションとして活躍します。時には馬に乗り、時には鏨(仏像をつくるための道具)で敵を撃退する……。かつてこれほど生き生きとした鞍作止利がいたでしょうか……?お堂の入り口にひっかかった仏像を見事な機転で搬入させた止利も魅力的ですが(『日本書紀』より)、こちらの文武両道な止利も大変素敵です。

 その他にも、日本史の教科書でお馴染みの《玉虫厨子》や《法隆寺救世観音像》などの美術作品もたくさん登場し、日本好き・美術好きの人にはたまらない小説だと思います。私はこの飛鳥という時代が大好きなのでとても楽しめました。興味が出た方はぜひ読んでみてください。

4回生柴田